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東京高等裁判所 昭和35年(く)57号 決定 1960年5月30日

少年 H(昭二〇、八、一〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、保護者父F、同母M子連名の審判に対する不服の申立と題する書面に記載せられているとおりであるから、ここにこれを引用する。

本件審判にかかる非行は、少年が昭和三十四年十一月初旬より同年十二月一日に至る迄の期間において、前後十四回に亘り、少年単独又は他の少年と共謀して、窃盗、詐欺の所為に出たものであつて、本件抗告の趣意は少年は背後の者から手足の如く使用せられていたに過ぎないので原決定は不当な処分であると主張するけれども、本件保護事件記録に徴すれば、右の主張事実は認め難く、却つて少年の発意により少年単独にて、或は他の少年を誘つてその少年と共謀して、本件の非行に出たことが認められる。しかうして、本件非行の動機、態様、回数、被害額等を考察すると本件非行は軽視するを得ざるものがあり、これに少年の家庭状況、従来の行状、殊に本件以前にも、二、三十回に亘り本件に類似する非行があつたことを併せ考量すると、少年を保護能力皆無とも見られる家庭に置くよりは、むしろ初等少年院に収容して環境を調整し、その性格を矯正するの措置を講ずるを以て適切妥当な方策と認めざるを得ない。よつてこれと同旨に出た原決定は相当であつて、抗告人ら主張の如く不当な処分とは考えられないから、本件抗告はその理由がなく、少年法第三十三条第一項に則りこれを棄却すべきものとし、主文の如く決定する。

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

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